「労務費の適正な価格転嫁に関する考察」
1. 背景
- 近年の物価上昇、最低賃金の引き上げに伴い、労務費の適正な価格転嫁が求められている。
- 2024年3月、トヨタより価格交渉増額に関する情報があり、受託企業にとって売上増のチャンス。
- 2025年4月に向けた価格交渉の進捗は4割程度だが、一部顧客は「既に値上げしたため、再度の値上げは不要」との認識。
2. 物価上昇の現状
- 消費者物価指数は12年間で約1.3倍に上昇。
- 企業物価指数(1.23倍)、輸出物価(1.4倍)、輸入物価(1.65倍)と、企業間の取引コストも上昇。
- 原材料費・エネルギー価格・労務費・物流費の上昇が大きな影響を及ぼしている。
3. 政府の対応
- 2023年11月:「労務費の適切な転嫁のための価格交渉に関する指針」公表(公正取引委員会)
- 2024年5月:下請法に関する運用基準の改正(公正取引委員会)
- 2024年12月:価格転嫁円滑化に関する調査結果公表(公正取引委員会)
- 2025年3月:建設業法・公共工事契約の適正化に関する法律改正(国土交通省)
4. 価格交渉の実態と課題
- 労務費は毎年上昇し続けるため、継続的な価格交渉が必要。
- 顧客との交渉では「原価改善で対応できるのでは?」との意見があるため、仕様の見直しも交渉ポイントになる。
5. 価格交渉を成功させるためのポイント
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顧客との関係強化
- 訪問回数を増やし、物価上昇に関する情報共有を行う。
- 値上げ交渉に慣れていない企業に対し、交渉の機会を作る。
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交渉の継続と妥協案の提示
- 労務費の上昇をデータで説明し、理解を得る。
- 仕様を下げるなどの代替案も提案する。
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価格改定の根拠を明確にする
- 最低賃金の推移、厚生労働省の賃上げ率、公共工事の労務単価データを活用。
- 自社の原価内訳を開示することで透明性を確保。
6. 実際の価格改定例(トヨタ会館)
- スタッフ・警備員の処遇改定(7%増)を反映し、2025年度委託費を約4.5%増額。
- 価格交渉の成功には、具体的なデータと交渉の継続が重要。
この資料は、労務費の価格転嫁に関する現状と課題を整理し、実際の交渉の進め方を解説した内容です。価格交渉を成功させるためには、適切なデータの活用、顧客との密なコミュニケーション、継続的な交渉が鍵となります。