活動報告

2024年04月例会 コンビニ業界について

1.「単品管理」で卓越した情報戦略

セブン-イレブンは、情報武装化の時代において、傑出した戦略を展開しています。その象徴が、POSデータを活用した「単品管理」です。この戦略は、小売業界における情報戦略の中でも特に注目されるものであり、その背後には巧みな情報活用とシステムの整備があります。

セブン-イレブンの圧倒的な強さの一端は、情報戦略の中核を担うツールによって支えられています。本部、店舗、地区事務所、共同配送センター、ベンダーなどを結ぶ総合店舗情報システムは、光ファイバーでつながり、情報の迅速な共有と分析を可能にしています。これにより、各店舗は迅速な意思決定を行い、市場の変化に柔軟に対応することができます。

また、セブン-イレブンは現在、店内無線LANを活用したマルチメディア型の第六次総合店舗情報システムを導入しています。このシステムは、動画や静止画、日声、文字、数値データなど、多様な情報を店舗に提供しています。店舗の商品発注担当者は、パソコン画面で最新の商品情報や天候、催事情報をリアルタイムで確認し、発注の精度を高めるための情報を活用しています。これにより、在庫の適切な管理や需要の予測が可能となり、ロスの最小化や顧客満足度の向上につながっています。

出所:セブン-イレブンの横顔より

さらに、セブン-イレブンの情報活用のシンボル的存在が「単品管理」です。この手法は、店舗が「明日、どの商品を、どれだけ売るか」という仮説を立て、POSデータでその仮説を検証し、毎日の発注を精度よく行うというものです。このプロセスを通じて、セブン-イレブンは顧客の購買行動や需要の変化を把握し、迅速かつ正確な発注を行うことが可能となります。

このような情報活用のシステムは、店舗システムによって円滑に実行されています。顧客がレジで精算すると同時に販売データを収集するPOSレジスター、検品や陳列状況の把握を支援するST(スキャナー・ターミナル)、発注を行うGOT(グラフィック・オーダー・ターミナル)とバックルームのSC(ストア・コンピュータ)が結ばれており、効率的な店舗運営を支えています。

顧客ニーズの変化や商品のライフサイクルの短縮化といった市場の変化に迅速に対応するためには、商品一品ごとの動きを管理し、データで検証しながら次の発注の精度を高める「単品管理」という手法が不可欠です。これにより、セブン-イレブンは常に最適な在庫を保ち、顧客に必要な商品を提供することができます。

総合すると、セブン-イレブンの情報戦略は、単品管理を核とした情報活用とシステムの統合によって支えられています。顧客のニーズや市場の変化に迅速かつ正確に対応するためには、情報を活用した効率的な店舗運営が不可欠であり、そのためには情報の収集、分析、活用が欠かせません。セブン-イレブンはそのような情報活用の面で、業界のリーダーとしての地位を確立しています。

2.店内レイアウトの秘密

コンビニエンスストアでは、お客さんができるだけ多くの商品を買ってもらうために、さまざまな工夫がされています。店内のレイアウトや商品の陳列方法には、細心の注意が払われています。

まず、店舗の基本レイアウトは、各社で大きな差異はなく、入口は通常、道路沿いの壁面に一か所設置されています。商品は壁面に置かれた陳列棚や冷蔵庫、店の中央部に設置された中島ゴンドラで販売されています。これにより、お客さんが商品を探しやすく、効率的に買い物ができるようになっています。

主力商品や人気商品は、特に目立つ場所に配置されます。これにより、お客さんがすぐに見つけることができ、購買意欲が高まります。また、注目度の高い商品は、壁面ゴンドラなどで販売され、お客さんの目に留まりやすくなっています。

入口付近には、雑誌コーナーやソフトドリンクのケースが設置されています。雑誌は性別や年齢を問わず、幅広い層が興味を持つ商品です。そのため、お客さんを壁面の通路に誘導し、店内を一周してもらう効果があります。また、ソフトドリンクは弁当と並ぶ主力商品であり、お客さんが最初に目にすることが多い位置に配置されています。

さらに、店内を一周すると最後に弁当コーナーが配置されています。これは、ファストフードの中で最も集客力がある弁当類を、お客さんが最後に目にするようにするためです。そのため、お客さんは他の商品を買いながら弁当コーナーに向かい、ついつい他の商品も購入してしまいます。

店内には、カウンターも設置されています。ここでは、おでんや中華まん、フライ物などのファストフード、菓子、タバコ、チケットなどが販売されています。これらの商品は、お客さんがレジで精算する際に目にすることが多く、ついつい追加購入してしまうことがあります。

以上のように、コンビニエンスストアでは、お客さんができるだけ多くの商品を購入してもらうために、店内のレイアウトや陳列方法に工夫が施されています。これにより、お客さんは便利に買い物ができるとともに、店舗側も売上を増やすことができます。

3.最先端の物流システムを構築

セブン-イレブンは、創業以来、物流の改革に力を入れています。最新の物流システムである「温度帯別共同配送システム」は、他のコンビニにも参考にされています。セブン-イレブンの目標は、お客さんが必要な商品を必要な量だけ、必要な時間に店舗に届けることです。

コンビニの店舗は、多種多様な商品を少量ずつ扱い、頻繁に発注され、在庫スペースも限られています。そのため、セブン-イレブンは「多品種・多頻度・小口配送」が可能で、温度管理もできる物流システムを構築しました。

このシステムでは、全国にチルド、米飯、フローズン、常温などの温度帯別の配送センターを設けています。全ての商品を共同配送センターに集め、そこで小分けにして店舗に配送します。これにより、非効率な配送車の往来が減り、配送の効率が向上しました。

セブン-イレブンの創業当初は、大手メーカーの商品は各々の問屋から別々に配送されていました。そのため、セブン-イレブンの店舗には、一日平均70台もの配送車が訪れていました。しかし、彼らは効率的な流通機構を目指し、物流の改革に着手しました。問屋などからの抵抗もありましたが、セブン-イレブンはコンビニに最適な物流システムを確立しました。現在では、納品車両台数は一日平均9台にまで減少しています。

4.株式会社セブン-イレブン・ジャパン:これからの IT

セブン-イレブン・ジャパンは、デジタルトランスフォーメーション(DX)を推進するため、2020年9月にデジタルデータ活用基盤「セブンセントラル」を稼働開始しました。この基盤は、クラウド上に構築され、各店舗や本部、社外のデータをリアルタイムに集約し、活用可能にすることで、COVID-19のような変動の激しい状況下でも迅速な意思決定を支援します。開発の背景には、従来のシステムがレガシー化し、ビジネス要件に適応できなくなったことが挙げられます。

セブンセントラルでは、Google Cloudを採用し、ビッグデータの取り扱いや将来の拡張性を重視しました。Google Cloudの特長であるサービスの拡張性、セキュリティ、オープン性に加え、BigQueryやApigeeなどのプロダクトが活用されました。特に、BigQueryは大規模データの高速処理や機械学習機能を提供し、Apigeeはデータとビジネスロジックの分離を支援しました。

セブンセントラルの開発には多くの苦労がありましたが、Google Cloudのサポートを受けながら、クラウドエースが技術的なチャレンジに取り組みました。また、システム構成のモダン化や開発手法の変更も行われ、アジャイル開発によるスピード向上が図られました。

セブンセントラルの本格リリース後、データのリアルタイム活用が可能になり、驚異的なレスポンス速度が実現されました。今後もセブンセントラルはさらなるデータ連携・活用を目指して進化し、AIや機械学習の活用も検討されています。

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