ブログ

審査員に好印象を与える申請書のコツ…事業再構築補助金③

「彼を知り己を知れば百戦危うからず」、説明の必要すらない有名な孫氏の一節です。事業再構築補助金についても“己”(申請者)に対し、“彼”(審査員)が存在しています。採択される申請書は、“彼”のニーズに合った申請書ということができます。今回は、“彼”のニーズとともに、その対応法を考えてみたいと思います。

補助金の財源は、わたしたちの税金。 明確な目的と透明性が必要。

補助金の財源は、言うまでもなくわたしたちが納める税金等から成り立っています。広く公平に集める「税金」を使って、特定の企業に補助金を交付するためには、明確な目的とともに、透明性が必要となります。

「補助金等に係る予算の執行の適正化に関する法律」では関係者の責務として、「第三条 各省各庁の長は、その所掌の補助金等に係る予算の執行に当つては、補助金等が国民から徴収された税金その他の貴重な財源でまかなわれるものであることに特に留意し、補助金等が法令及び予算で定めるところに従つて公正かつ効率的に使用されるように努めなければならない。」としています。

補助金の財源、またその執行に関する法律からも、彼(審査員)が求める事柄は、公募要領等を通じて明確に示されると考えて良いでしょう。

事業再構築補助金の狙いとは。 生産性の向上と企業規模の拡大

正確な要求事項については公募要領を待つとして、現在公表されている資料から、彼(審査員)が求める内容を推測してみましょう。少し長くなりますが、2020年12月1日の成長戦略会議実行計画から引用してみます。

「ウィズコロナ、ポストコロナへの対応は、我が国の労働生産性の改善に取り組む好機であり、デジタル化の推進、合併・M&Aによる規模拡大、業態転換、スタートアップ企業の環境整備、人材育成などを通じて、中小企業も大企業も含めた日本全体で労働生産性の向上を図る必要があることについて、有識者の意見の一致があった。その際、大企業より労働生産性の高い中小企業も存在し、業種や業態、企業ごとに状況は異なるため、規模の大小にかかわらず、それぞれの企業が持つ強みをいかに伸ばすかという視点で考えるべきとの指摘が多かった。一方で、労働者の7割が中小企業で働いていること、大企業の生産性に対する中小企業の生産性は5割程度であることから、中小企業の生産性向上に取り組む必要があり、規模拡大が重要であるとの指摘があった。また、中小企業が地域の雇用のみならず、地域のコミュニティや共助を支えるなど、重要な機能を有しており、生産性向上に当たっては、地域社会等の意見もよく聞きながら進めていくことが重要との指摘があった。 」(2020年12月1日「成長戦略会議実行計画」より)

事業再構築補助金を活用して、強みを伸ばして新分野展開・業態転換を行うと、「生産性が向上し・企業規模も拡大し、地域の雇用・地域のコミュニティや共助に貢献します。」というストーリーを求めていると思います。

求められている事業再構築のストーリーとは。 SWOT分析を使って考える。

「事業再構築補助金の概要」では、「現在の企業の事業、強み・弱み、機会・脅威、事業環境、事業再構築の必要性」を事業計画に含めなさいとあります。ここではSWOT分析を用いて、申請書のストーリーを考えてみましょう。

①●●の脅威により、売上が減っている。現在の内部リソースでは回復にも限界がある。
②ついては、○○の強みを活かして有望な□□市場に参入する。
③現在の□□市場のプレーヤーに対し、当社には◇◇の強みがある。
④◇◇についてはユーザーニーズが明確に存在し、価格を△△にすることで高い競争力を持つことができる。
⑤□□市場に参入するに当たり、▲▲の課題があるため、事業再構築補助金を活用し、▽▽を行う。
⑥その結果、付加価値が向上し、地域経済に対し・地域産業の活性化・雇用・納税面等において貢献を高めることができる。
いかがでしょうか。公募要領が発表されたら、内容をよく理解し、審査項目にしっかり対応した申請書のストーリーを考えてみましょう。

審査項目は、公募要領に公表されている! 確実に対応し、点数の付かない項目を作らない。

中小企業庁「事業再構築補助金の概要」では、事業計画に含めるべきポイントの例として、・現在の企業の事業、強み・弱み、機会・脅威、事業環境、事業再構築の必要性・事業再構築の具体的内容(提供する製品・サービス、導入する設備、工事等)・事業再構築の市場の状況、自社の優位性、価格設定、課題やリスクとその解決法・実施体制、スケジュール、資金調達計画、収益計画(付加価値増加を含む) の4点を挙げています。

具体的な審査項目は公募要領に掲載予定としていますが、・事業化に向けた計画の妥当性・再構築の必要性・地域経済への貢献・イノベーションの促進などが審査項目となる可能性があるとしています。右図はものづくり補助金公募要領に記載された審査項目を一覧化したものですが、事業再構築補助金についても、公募要領で審査項目を明記するはずです。審査については、公表された各項目毎に採点を行い、集計、合計点を算出するという方法が考えられます。申請書を作成する際は、審査項目に対応する事項を確実に記載し、点数の付かない項目を作らないことが大切です。

申請書の説得力を高めるには? 使えるテクニックはコレ!

採択される申請書を作成するには、ストーリーがしっかりしていることが当たり前ですが、テクニックもある程度は必要です。

ものづくり補助金では、士業・大学教授・大企業OB等が審査員を務めていますが、事業再構築補助金の審査についても同様に予想されます。ここで強調したいことは、「申請者の業界のプロ」ばかりではないということです。つまり“特別な知識が無くても内容を理解できる”申請書を作成しなければいけません。

申請書の説得力を高める6種類のコンテンツを表にして紹介します。申請する事業の内容に合ったコンテンツを選択し、説得力ある申請書を作成してください。審査員は大量の申請書を採点しなければなりません。“精読”されることを前提とするのではなく、申請書の内容を感覚的にも理解できるように作成することが大切です。

①できるだけ数値を使い、根拠を明確に示す。

審査員に、申請書の内容を“信用”していただくために、市場の状況、事業の効果等については、可能な限り数値を示しましょう。また数値を示す際もグラフや表にし、感覚的に理解できるよう工夫しましょう。また写真等を用いることも、リアリティを高める上で効果があります。

②タイトルの付け方を工夫する。

「(強み)」を活かして、新しい「(取り組み)」に進出。〇年で□%の成長を実現(結果)のように、申請書の内容を簡潔にまとめた内容にしましょう。また申請書内についても、適宜、見出しを設定、“見出しを繋げて読むだけで、申請書の内容を8割理解できる”ように工夫しましょう。

③強調ルールを決める。

審査員に特にアピールしたい部分は、強調して表現するようにしましょう。強調の仕方は、色を変える、書体を変える等の方法があります。ただし強調の仕方に統一性がないと見づらくなってしまいます。強調ルールは3種類程度に抑え、メリハリのある申請書を作成しましょう。

事業再構築補助金の目的や制度をよく理解し、適切かつ効果的に使っていきましょう。

 

PAGE TOP