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早めの回の応募が補助金獲得に有利?…事業再構築補助金②

 話題の事業再構築補助金ですが、応募を考えている方々も数多くいると思います。複数回の公募が予定されている  事業再構築補助金ですが、早めの回の応募が採択されるには有利との声も聞きます。今回は、ものづくり補助金における応募数と採択率の推移等も参考に、傾向を予測してみたいと思います。

ものづくり補助金にみる応募数と採択率の推移。データ上は早めの回が有利とはいえない。

締め切りの回ごとに、応募数と採択数をグラフにしてみました。結果を見ると、応募数・採択数・採択率ともに、時系列におけるはっきりとした傾向を見出すことはできませんでした。

年度ごとに応募回数が異なるため、年度単位で再集計しましたが、こちらについても時系列におけるはっきりとした傾向を見出すことはできませんでした。

 少なくともデータ上は、早めの回の応募が採択されるには有利とは言えない結果となりました。

補助金は、中小企業政策の一部。 では景気動向と採択率の関係は。 

補助金は、中小企業政策の一部です。景気動向と採択率の関連性について、見てみます。景気動向については、その速報性の高さから、内閣府が行う景気ウォッチャー調査の、ものづくり補助金の締め切り時点に最も近い時点における景況DI(季節調整値)を用いて比較してみます。

結果は、相関係数-0.41と微妙なものとなりました。令和元年補正一次(2020年3月31日締切)・二次(2020年5月20日締切)の採択率が、それぞれ62.5%、57.1%と、他の回と比較して高いことから、景気動向を考慮して採択率を高めている可能性があります。

事業再構築補助金の説明で、「ポストコロナ、ウィズコロナ時代の経済社会の変化に対応するため」と明確に謳っていることから、少なくともコロナの影響による景気動向は、採択率に反映される可能性がありそうです。

事業再構築補助金の政策目的は? 積極的な構造改革の推進による生産性の向上と規模拡大!

改めて事業再構築補助金の政策目的を確認するために、今の政府が考える基本方針を、成長戦略会議実行計画から見てみましょう。
「ウィズコロナの時代がある程度の期間、続くことを考えると、従来のビジネスモデルを単に維持していくということは難しく、むしろ、積極的に構造改革を起こす必要がある。(中略)まず、新型コロナウイルス感染症の影響が長期化する中、前向きな取組を行う意欲のある中小企業・中堅企業については、危機的状況に追い込まれてようやく新規事業等に取り組むのではなく、可能な限り手前のステージにおいて、規模拡大、新分野展開、業態転換を通じた生産性向上などの事業再構築に挑戦することを支援する必要がある。」(2020年12月1日「成長戦略会議実行計画」より)
2020年12月1日「成長戦略会議実行計画」の目次
いかがでしょうか。最終的には、構造改革による生産性の向上と規模拡大を目的とすること、その他に、コロナの影響とともに「危機的状況に追い込まれてようやく新規事業等に取り組むのではなく、可能な限り手前のステージにおいて…」とその時期について明確に記載されています。これらの材料からも、応募回の早い遅いというより、コロナによる影響の大きさが採択率に関係してくる可能性を感じられるのではないでしょうか。

採択率に大きく影響? 緊急事態宣言特別枠にも注目!

通常枠の申請要件を満たし、かつ、緊急事態宣言に伴う飲食店の時短営業や不要不急の外出・移動の自粛等により影響を受けたことにより、令和3年1~3月のいずれかの月の売上高が対前年または前々年の同月比で30%以上減少している事業者(地域や業種は問いません。)については、「緊急事態宣言特別枠」での申請が可能となる見込みです。

「緊急事態宣言特別枠」での申請は、補助率が中小企業:3/4、中堅企業:2/3に引き上げられる他、不採択となった場合も、通常枠で加点の上、再審査されます。

「事業再構築補助金の概要」資料では、採択件数の限りとともに、「不採択となった場合も、通常枠で再審査しますので、特別枠へ応募された方は、その他の方に比べて採択率が高くなる可能性が高いです。」と記載しています。採択の可能性を高めたい場合は、条件に合致する限り、「緊急事態特別宣言枠」での応募を優先しましょう。

最新ノウハウ実践研究会 北園 貴雄(中小企業診断士)、小島 靖弘(中小企業診断士)、天野 和則(中小企業診断士)

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